晴耕雨読

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ポジティブ心理学

ポジティブ心理学とは、ポジティブ感情(快の人生)、エンゲージメント(充実した人生)、意味・意義(有意義な人生)の3つの要素からなる幸福の学問的探究です。

ポジティブ心理学

  • ポジティブ感情(快の人生):
    • 楽しみ、歓喜、恍惚感、温もり、心地よさなどの、自分が感じるポジティブな要素を中心に一生順調に過ごすことができるような人生。
  • エンゲージメント(充実した人生):
    • フローとは、無我夢中で我を忘れる感覚。この状態(フロー状態)になること目的とする生き方を目指す。
    • エンゲージメント(没頭)は必ずしもポジティブな感情とは限らない。フロー状態に伴う過度な集中状態のとき、人は何も考えておらず、何も感じない。
    • フロー状態になるためには、自分の最高の強みを見つけ、それを頻繁に活用する方法を学ぶ必要がある。
  • 意味・意義(有意義な人生):
    • エンゲージメントの多くは孤独で自分の世界に閉じている。自分が死ぬまでフロー状態であり続けるための理由、意味、社会的な意義を求めている。
    • 自分より大きいと信じる組織(宗教、政党、何らかの活動、家族)に属して、そこに仕えることで、有意義なものを築く生き方を目指す。

ウェルビーイング (Well-being)

  • 持続的幸福度 (Flourish) が増えることで、ウェルビーイングが高くなることが、ポジティブ心理学の目標の一つ
  • ウェルビーイングの5つの要素(PERMAモデル)
    • ポジティブ感情 (Positive Emotion):快の人生。ポジティブな感情を持っている状態
    • 没頭 (Engagement):充実した人生。自分を忘れるほど何かに没入している状態
    • 意味・意義 (Meaning):有意義な人生。自分のかけた時間に意味があったと思える状態
    • 達成 (Achievement):達成の人生。問題を解決するために人生を捧げられる状態
    • ポジティブな関係性 (Relationships):他者に親切にすること。自分のことを気にかけてくれる人がいること
  • 上記の要素を支えるのが「強み」と「徳」である

ポジティブな個人特性

  • ヒューマン・ストレングス (Human Strengths) とは、人間のポジティブな機能や能力、強さ、特徴を包括的に捉えて定義した概念
  • ヒューマン・ストレングスと呼ばれるポジティブな個人特性は「幸福で価値のある人生」を自分で実現するために重要と考えられている
  • VIA・強みテスト を受けることで自分の強みを認識できる
  • VIA-ISの構成 :
    1. 知恵と知識 : 目標を達成するための適切なアプローチを見つけることに秀でている
      • 創造性・独創性・創意工夫、好奇心・興味関心・経験への積極性、知的柔軟性・判断力・批判的思考、向学心、大局観・見通し
    2. 勇気 : 逆境に直面したときに達成は不確実ながらも価値のある目標へと進む
      • 意志力、勇敢さ・勇気、忍耐力・我慢強さ・勤勉、誠実性・純粋さ・正直さ、熱意・情熱・意欲
    3. 人間性 : 友人知人、家族、見知らぬ人も含めた人とのポジティブな社会的交わり
      • 愛情(愛する力・愛される力)、親切心・寛大さ、社会的知能・情動知能・対人知能
    4. 正義 : 家族やコミュニティ、国家、さらには世界といった大きなグループと自分との関係において発揮される
      • チームワーク・社会的責任・忠誠心・市民性、平等・公正、リーダーシップ
    5. 節度・節制 : 自分の欲求や欲望を適切に制御でき、自分も他人も活かせるように別の機会を待つよう振る舞う
      • 寛容さ・慈悲心、謙虚さ、思慮深さ・慎重さ・注意深さ、自己調整・自己コントロール
    6. 超越性 : 自分の殻の外へと広がり、自分を超えて永続性のあるもの(未来、進化、神、宇宙)とつながる感情的な強み
      • 審美心(美と卓越性に対する鑑賞能力)、感謝、希望・楽観性・未来志向、ユーモア・遊戯心、精神性(スピリチュアリティ)・宗教性・信念・目的意識

ポジティブな環境

  • ソーシャルサポートや資源、ネットワークなどを含めたポジティブな環境要因が心身の健康や適応に影響する
  • ポジティブな環境が、ポジティブな主観的経験やポジティブな個人特性を伸ばす可能性がある
  • ポジティブな学校教育を行う上での基盤 :
    • 子ども同士で配慮し合える関係や環境
    • 教師と子どもの間の信頼関係
    • 多様性に対して許容される環境
  • ポジティブ心理学もコーチング心理学も、最終的には個人だけでなく、集団や組織のウェルビーイングが高まることを目指す

ポジティブ心理学エクササイズ

  • ポジティブ心理学とは、人間が持っているポジティブな面に着目した心理学
  • ポジティブ心理学エクササイズを行うことでポジティブ感情を育むことができる
    1. 感謝の訪問
      • 感謝の気持ちを感じるとき、自分の人生のポジティブな出来事に伴う好ましい記憶から恩恵を受けられる
      • 頭に浮かんだ人に感謝の手紙を書いて、自分で直接その手紙を届ける
    2. 3つの良いこと (three good things)
      • ネガティブな出来事に注意を向けると不安や抑うつを招く。一方でうまくいったことについて考えることでポジティブになれる
      • 今日うまく行ったことを3つ書き出して、それらがどうしてうまくいったのかを書いてみる
    3. 特徴的強みエクササイズ
      • 「VIA・強みテスト」から自分の強みを理解する
      • 特徴的強みの特質 :
        • 当事者意識と本来感 (これが本当の自分らしい自分という感覚) がある
        • 強みを発揮している最中に高揚感を得る
        • 強みが初めて発揮されるときに学習曲線の急上昇が見られる
        • 強みを活用する新しい方法を見つけたいという渇望感がある
        • 強みを活用することへの必然性を感じる
        • 強みを活用している最中は疲労ではなく活力を得る
        • 強みを中心に個人的な課題を創造して追求する
        • 強みを活用している最中には喜び、活力、熱意、さらには恍惚感を得る
    4. 何かに没頭できるフロー (熱中) の発見
      • フロー : 今していることに没入して意識せず自らを完全にコントロールできている状態
      • ゾーン : スポーツ心理学におけるフローの領域
    5. セイバリング
      • 過去や現在のポジティブな出来事や気持ちを、しっかり味わうこと
  • レジリエンスの発揮においてもポジティブ感情の体験は必要不可欠な要素となる

ポジティブ心理学コーチング (PPC)

  • ポジティブ心理学コーチングは、認知行動的アプローチや解決思考アプローチなどを統合した方法
  • 認知行動的アプローチ : 設定した目標を達成するために選択肢を生み出し、現実的な行動計画が立てられるようにクライアントを支援する
  • アプローチでは以下の2つに焦点を当てる :
    1. 思考パターンを変える
      • 例)健康阻害思考 (Health Inhibiting Thinking; HIT) から健康増進思考 (Health Enhancing Thinking; HET) に改める
    2. 行動パターンを変える
      • 例)ストレスを減らすために何ができるかを考える
  • 使用するモデルやフレームワーク
    • イメージ技法
      • 視覚だけでなく、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、身体感覚、こころの状態などをより現実に近い状態を想像で体験する
      • 鮮明性 (よりリアルにイメージすること) と統御可能性 (自分の意図した通りにイメージをコントロールすること)
      • 例)動作の習得や改善、練習や試合へのメンタルリハーサル
    • SPACEモデル
      • 環境 (Social context)、身体 (Physiology)、行動 (Actions)、認知 (Cognition)、感情 (Emotions) の頭文字
      • 行動が発生する社会的コンテキストと生理学的または生物学的反応を考慮して、個人の行動、感情、認知の間の関係を調べるためのモデル
  • ポジティブ心理学コーチングは、何らかの欠点や不足といったネガティブな要因よりも、個人の成長や目標達成のための個人の能力等を高め発達させることを目指した、個人の強みの活性化や育成に焦点を当てたポジティブなアプローチ
    • 人生に影響する複合的な要因を認識する
    • 自身の個人特性や強みを活用できる形で理解する
    • 行動へと繋げるアプローチを実践し、新しい方向性を促す
  • 得られる結果 :
    • 個人 : パフォーマンスの改善や向上、自己効力感や自信、自己肯定感、人生満足感、主観的幸福感
    • 組織 : 有能な人材の確保、労働意欲や従事の活性化、顧客満足度、経済成長
  • ヒューマン・ストレングスに焦点を当てたアプローチは、個人の強みを認識させ、実際の行動を促進させ、個人の成長や良好な関係性の構築や資源の活用、ウェルビーイングの向上につながる

拡張-形成理論

  • ポジティブな主観的経験には、ポジティブ感情、幸福感、満足感、充実感といった多面的側面を含む主観的ウェルビーイングなどが含まれている。
  • Fredricksonの拡張-形成理論 (Boerden-and-build theory) において、ポジティブ感情は、その後のより効果的な思考や行動の拡張に繋がり、そのような思考や行動が繰り返されることによって個人のポジティブな資質 (レジリエンス能力など) が形成され、さらなるポジティブ感情を体験しやすくなるという循環構造になる。
  1. ポジティブ感情を経験する
  2. 思考や行動レパートリーが一時的に拡張 (Broaden) する
    • ポジティブ感情によって、課題に対して注意を向ける速度や識別反応が高まる
  3. 個人資源の持続的に形成 (Build) する
    • ポジティブ感情によって、自己に対するポジティブな認識や他者との良い人間関係を築く動機づけが高まり、結果的に個人の様々な資源の獲得と形成につながる
    • 獲得・形成できる資源の例 :
      • 認知的資源 : マインドフルネス
      • 心理的資源 : 人生の目的、自己受容
      • 社会的資源 : ソーシャルサポートの増加
      • 身体的資源 : 病気の自覚症状の減少
  4. 健康、生き延びる力、充実感の向上
  5. さらにポジティブ感情を経験する (1に戻る)

参考文献