自己肯定感とは、自分が自分であることに満足し、価値ある存在として受け入れられることです。 自己肯定感は、自尊感情や自己受容、自己効力感などから構成されています。
自尊感情
- 自尊感情とは、自分には価値があると思える感覚
- 自らのパーソナリティ(個性や人柄)を自分で評価し、自ら生きる価値を認識し、自分の生かされた命を大切にする感情
- 自尊感情が低下すると、他人と比較して、嫉妬心や劣等感から感情をすり減らす
- 低下した自尊感情を埋めるために承認欲求が強くなる
- トラウマに対しては、イメージで失敗経験を上書きする
自己受容感
- 自己受容感とは、ありのままの自分を認める感覚
- 自分が自分らしくしなやかに生きるために必要な感覚で、折れない心(レジリエンス)を持つことができる
- 自己受容感が高いと、様々な経験も乗り越えられる
- 自己受容感が低いと、小さなミスが気にかかり、行動に移すことができなくなる。また、自分のネガティブな面に対して執着するようになり、自己否定的になることで他者からの評価が気になる。そのため、人の意見に振り回されて、人間関係に悩むようになる。
- アプローチ
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if-thenプランニング
- 「もしAが起きたらXをする」と事前に決めておくことで状況を客観視し、不安から行動を躊躇してしまう自分の背中を押す
- 自動思考の流れを断ち切るための手法
- 例)悪口を言われたとしても、私の価値は変わらないんだと小さくつぶやく
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エクスプレッシブ・ライティング (筆記開示)
- 自己受容感を損なう原因となった出来事とその時の感情を思い出して紙に書く
- 書き出すことでネガティブな感情をしっかりと認識でき、忘れたくても忘れられなかった記憶へのこだわりが小さくなっていく
- 自分の気持ちに距離をとり、客観的に見つめる「ディスタンシング」の方法の1つ
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ライフチャート
- 今の私の人生の様々なテーマに対する感情や価値観を表出化、数値化、可視化して、自分について知る(自己認知)
- 最も点数の低い項目に対して1点だけ上げる計画を立てて実行する
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if-thenプランニング
自己効力感
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自己効力感とは、特定の分野で必要とされる行動をやり遂げられるという自己信念
- スポーツにおいてアスリートが卓越したパフォーマンスを発揮できると感じる自己信念(勇気)
- アプローチ
- 自己効力感への介入 :
- 達成経験 (mastery experience) : 何かを達成したり成功したりした経験。「自分はできる」という感覚につながる
- 代理経験 (vicarious experience) : 他人の達成経験の観察。観察学習やモデリングとも呼ばれる。他人が達成する様子を観察するだけで自己効力感を高める効果がある
- 言語的説得 (verbal persuasion) : 言語的な励まし。「君ならできる」と他人に説得されたり、自分で自己暗示をかけたりする
- 生理的情緒的高揚 (emotional & physiological states) : 酒や薬物などによる生理的な気分の高揚
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スモールステップの原理
- 達成できそうな課題に取り組むこと
- 課題を達成したという成功体験を得ること
- また、失敗したとき何をすべきかをあらかじめ決めて、失敗や挫折したときの対処法を準備しておくことで、意志が弱いことで落ち込むことを回避できる(if-thenプランニング)
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イメージ技法
- エクササイズの中でアスリートが過去に成功した経験や、パフォーマンスに役立つ記憶に焦点を当てて促し、自己肯定感を高める
- イメージトレーニングは、自己批判傾向が高い人に対して心拍数やストレスに肯定的な効果をもたらす
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リフレーミング
- 否定的な言葉を肯定的な言葉に置き換える
- 例)「お疲れ様」=>「ありがとう」、「遅れないでね」=>「間に合うように来てね」
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ポジション・チェンジ
- ネガティブな負の感情への見方を変える
- 自分の位置や相手の位置、第三者の位置など立ち位置を変える事によって、物事の見え方や感じ方が変化する事を体感するワーク
- 自分の気持ちに距離をとり、客観的に見つめる「ディスタンシング」の方法の1つ
- 自己効力感への介入 :
- 「思ったようにはいかない」と思い込むだけでも、自己効力感は高まる
- 自己効力感の種類 :
- 一般的自己効力感 (general self-efficacy) : 領域を超えた全てのことのやる気。例)通常の学業
- 領域固有自己効力感 (task-specific self-efficacy) : 特定の課題だけについてのやる気。領域固有自己効力感が一般的自己効力感へ影響を及ぼすこともある。例)部活動や課外活動など
- 自己効力感は、自己調整学習を引き出す上で重要な要素となる
- 学習の計画段階で目標を立てる際に、自分がどれだけできるか(できそうか)についての見通しは、まさに自己効力感そのもの
- コーチング
- 認知行動コーチング (CBC) は、自己効力感を強化する上で役に立つ
- 解決思考コーチング (SFC) やポジティブ心理学コーチング (PPC) は、個人や組織の力が最大限になるピークパフォーマンス(至高体験)を発揮する上で役に立つ
- レジリエンスの介入においても、自己効力感を持てるように働きかけることが必要
- 自らを大切な存在だと思える自尊心
- 状況を自ら変えることができるという自己効力感
- すぐに効果が出るものではなく、周りから大切にされる経験や、成功体験を1つずつ積み重ねることが必要
- 類似の概念
- 自己肯定感(自尊心 : self-esteem)
- 自信 (confidence)
- 自己啓発
- ポジティブシンキング
自己信頼感
- 自己信頼感とは、自分を信じられる感覚。自分を信頼して行動する感覚
- 勇気と自信は自分で作ることができる。根拠のない自信こそが絶対的な自信である
- メンタルモデル : 認知心理学における物事の解釈の仕方
- 否定的なメンタルモデルから抜けるためには、メンタルモデルを変える必要がある
- アプローチ
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課題の分離
- ネガティブな心理プロセスに陥っているとき、その原因がどこにあるのかを切り分けする
- アドラー心理学における「他人の課題には踏み込む必要がない」という重要な考え方
- 周りの顔色を見て物事を選択する姿勢は責任の放棄であるため、推奨されない行為
- 例)上司との間にある様々な問題を、上司の問題なのか自分の問題なのかに分ける
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瞑想
- 心をリラックスさせて不安、恐れ、心配といった人間が根源的に持っている防御本能の働きを緩める
- マインドフルネス瞑想法など
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脱フュージョン
- 不安な感情を切り離す心理療法
- 混ざり合った (フュージョンされた) 感情から負の感情を切り離す
- 負の自動思考で思った言葉を繰り返し口に出し、最後に「〜と考えた」や「〜と考えたことに気づいている」と付け加える訓練をする
- 自分の気持ちに距離をとり、客観的に見つめる「ディスタンシング」の方法の1つ
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課題の分離
- ゲシュタルトの祈り : ゲシュタルト療法で使われる詩
- 私は私のために生きる。あなたはあなたのために生きる。 私は何もあなたの期待に応えるために、この世に生きているわけじゃない。 そして、あなたも私の期待に応えるために、この世にいるわけじゃない。 私は私。あなたはあなた。 でも、偶然が私たちを出会わせるなら、それは素敵なことだ。 たとえ出会えなくても、それもまた同じように素晴らしいことだ。
自己決定感
- 自己決定感とは、自分で決定できるという感覚
- 人間の感じる幸福度は、人生を自分でコントロールできている感覚に比例する
- 進学や就職を自分の意思で主体的に決定すると、その後の人生でも自らの判断で努力し、目的を達成する可能性が高くなり、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなる
- 自己決定感が低下していくと、周囲への依存度が増す。失敗しても他責的になる
- モチベーション(動機づけ)
- 内発的動機づけ : 楽しいから、好きだから、と自ら主体的に活動している状態
- 外発的動機づけ : 人に言われたから、と目的を達成するための手段として活動している状態
- 選択肢が豊富だと決断力が鈍り、思考が停止すると、自己肯定感が低下する
- アプローチ
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タイムライン
- 1年後、3年後、5年後、7年後の自分の姿をイメージしていく
- 未来から見たら自分は今何をすべきかという問いを自分に投げかける
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レファレント・パーソン
- 尊敬するあの人ならこんなときどうするか考えてみる
- 視野が広がり、視座が高まり、認知の歪みを修正しやすくなるメリットがある
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イメトレ文章完成法
- 絞り込んだ選択肢を実行した結果、どんな未来が待っているかを具体化する
- [目標の設定] 私が実現したい目標は「◯◯」です
- [メリット] なぜなら、その目標を達成すると「◯◯」だからです
- [ブレーキ] しかし「◯◯」が私の目標を妨げています
- [現状把握] そのため、私は今「◯◯」という状況になっています
- [新しい方法] そこで、私は目標に近づくために「◯◯」という新しい方法を試みるつもりです
- [コンピテンス] なぜなら、私の強みは「◯◯」であり、それが目標を達成するために役立つと思うからです
- [協力者] また、目標に向かうにあたり「◯◯」さんが協力してくれます
- [環境] 目標に向かうにあたり「◯◯」という環境が味方してくれると思います
- [ノウハウ] 私は目標を達成するために「◯◯」というノウハウを持っています
- [やる気] 私は目標を達成するために「◯◯」という方法でやる気を引き出します
- [最初の一歩] 私は目標を達成するために、まずは「◯◯」から始めます
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タイムライン
自己有用感
- 自己有用感とは、自分は周囲の人や社会との繋がりの中で何かの役に立っているという感覚
- 人は自分のためだけに頑張れない。他人のために喜べる
- 人間関係が良好であれば、自己有用感を実感でき、自己肯定感が向上する
- 興味のある分野で人との繋がりを作り、そこに参加して役に立っているという感覚が、自己有用感につながる
- 仕事とは全く無縁の自己肯定感の高い人が集まるコミュニティに所属し、ありのままの自分をさらけだすこと
- アプローチ
- レファレント・パーソン
- タイムライン
- 3つの良いこと (three good things)
- ポジション・チェンジ
自己肯定感
- 自己肯定感とは、自分が自分であることに満足し、価値ある存在として受け入れられること
- 自己肯定感が低いときは、ネガティブなことを受け入れることができず、拒絶への恐怖をいつも以上に強く感じてしまう
- 自己肯定感という感情のエネルギーがあれば、日々の生活の中で「楽しさ」や「大丈夫」と思えることが多くなる
- アプローチ
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自己認知
- ライフチャート
- レファレント・パーソン
- 課題の分離
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自己受容
- タイムライン
- リフレーミング
- if-thenプランニング
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自己成長
- 3つの良いこと (three good things)
- 冒険ノート (ピグマリオン効果)
- イメトレ文章完成法
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負の感情のコントロール
- エモーショナル・スケーリング (負の感情を数値化して客観視する)
- 脱フュージョン
- ポジション・チェンジ
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自己認知
- 心理的安全性 : 組織のためであれば周りから嫌われても正しいことを言える雰囲気
参考文献
- 中島輝『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』SB Creative 2019
- 自己効力感
- シヴォーン・オリオーダン (編集, 著), スティーブン・パーマー (編集, 著), 徳吉 陽河 (監修, 翻訳)『コーチング心理学ガイドブック』北大路書房 p.111
- 守 一雄『教育課程コアカリキュラムに対応した教育心理学』松本大学出版会 2019 p.87
- 【自己肯定感の育て方】スタンフォード式 親子でできるメンタルトレーニング/危険な自己肯定感・求めるべき自己肯定感/最新の脳科学・心理学200以上の研究論文に裏打ちされた子育てメソッド - YouTube