「失敗なくして成功なし」や「失敗は成功のもと」と言われるように、失敗をする勇気と失敗を受け止めて次に活かすことは、成功するために必要なことです。 ここでは、どのようにして失敗を乗り越えていくか、その思考についてお話しします。
思考・考え方
苦痛や失敗の乗り越えて成功するための考え方やマインドセットについて
苦痛を喜びに変える(変態化)
人は失敗が怖いので、自分の実力以上のことをやりたくないと考えます。 勉強や仕事において常に困難や苦難は存在しており、やりたくないことや自分の実力で解決できない問題に取り組んでいるときは、精神的に苦痛です。
人は精神的な苦痛を乗り越えてこそ成長できると言われていますが、これは半分誤りです。 正確には「精神的な苦痛を喜びに変えられる人が成長できる」が正しいです。 マイルドな修羅場、つまり修羅場を楽しむことができる環境が人を成長させます。 例えば、技術界隈には「変態は褒め言葉」という文化があります。 普通の人だと精神的な苦痛を感じる作業が、その人には喜びになっていて、その積み重ねによって技術的に卓越した方を「変態」と呼んだりします。 変態と呼ばれる方は、苦痛を喜びに変えることで苦痛の価値がすり替わるため、努力を続けることができ、成長を続けることができます。 普通の人だったら途中で辞めることをやり続けることで、その人の個性や人柄が形成され、他人と比べる必要がないほどの自分の世界が作られていきます。
「継続は力なり」「努力を継続することも才能」などは、苦痛を喜びに変えることによる成果といえます。 また、リフレーミングは物事の見方や捉え方(フレーム)を変えて価値基準を変える技法です。
失敗の意味を変える(成長マインドセット)
グロースマインドセット(成長マインドセット、しなやかマインドセット)とは、自分の才能や能力は経験や努力によって向上できるという考え方のことです。 反対に、フィックスマインドセット(固定マインドセット)とは、自分の才能や能力は固定であるという考え方です。 成長マインドセットの人にとって、失敗体験は自分を成長させるための糧になると考えています。 しかし、固定マインドセットの人にとって、失敗体験は自分の能力や可能性に欠けている証明であると考えてしまいます。 その結果、失敗を回避するために挑戦を諦め、自分の欠点を認めず、良い成績の人の回答から目を背け、自尊心を保つために人のせいにし、自分よりも出来の悪い人を見つけて安心すことで、失敗を改めて成長する努力をしなくなります。
固定マインドセット | 成長マインドセット | |
---|---|---|
能力は | 努力で伸びない | 努力で伸びる |
努力とは | コスト。少ないほど良い | 能力を高める方法 |
目的 | 自分の凄さを証明すること | 能力を高めること |
なりたい姿 | できるだけ自分をよく見せたい | 難しいことに挑戦してよくなりたい |
失敗とは | 自分が欠けていることの証明 | 自分が成長するための投資 |
注目する箇所 | 結果 | 過程 |
失敗や指摘 | 能力の低さの証明 | 成長の手がかり |
課題への取り組み | 難しいことに挑戦しない | 難しい課題を解決できるか考える |
どんな憧れの人でも、その人は裏で人一倍努力しているし、自分より優れた結果を出している人も、才能の差ではなく、物事に投下した時間と熱量(研究熱心・懸命な練習)があったからできたものと考えるべきです。 そして、それは自分自身も例外ではありません。 失敗は成功の元(Failure is the mother of success)と信じて、たとえ失敗しても継続することが大切になります。
複数の人格を持つ(多重人格化)
人は失敗が怖いので、対人関係で傷ついたり嫌われたりするのを恐れます。 人から好かれたい・評価されたいという気持ちが優先されると、対人関係で失敗する可能性がある行動や発言を回避しようとし、消極的な対人関係になってしまいます。
解離とは、苦痛によって精神が壊れてしまわないように、複数の人格を作る心理的な無意識の防御反応です。 長い期間にわたって激しい苦痛を受けると解離性同一障害になってしまいますが、新しい環境への挑戦などで成長に必要な苦痛を受け入れるときに、意図的に解離するという方法もあります。 人は誰しも多重人格であり、ペルソナ(社会に適合するための人格)を場面や相手ごとに使い分けています。 失敗を恐れない人は常に複数のペルソナを管理しており、たとえ失敗をして上司に怒られたとしても上司や会社に対するペルソナに不備があったと感じるだけで、自身のメインの人格を否定されたとは感じません。 自分の特別さに傷がつくことはありません。 逆に、1つの人格に縛られている人は、失敗することで自身の人格が否定されたように感じるため、人と接するのを回避し、引っ込み思案になります。 場面や相手に応じてペルソナを使い分けて (ロールプレイをして)、多くの人と会話や議論を重ねることが、失敗を受け入れて成長することにつながります。
「嫌われる勇気」は、複数の人格を持つことによる一つの成果といえます。 また、変態化と多重人格化を組み合わせることで、聖人や菩薩のような人が生まれます。
無意識を意識する(メタ認知)
人は直感で物事を判断して失敗を回避します。 直感は、経験から素早く決断する重要な役割を果たしますが、回避性の直感で生きていると失敗を恐れて挑戦する機会を失ってしまいます。
「どうせ頑張ったところで」や「めんどくさい」と思って諦めてしまうのは、目的論に基づくと「できない」のではなく「傷つきたくないからやらない」のです。 頑張って失敗した時の自分を受け入れられないからです。これは、ある種の自己防衛反応です。 原因帰属理論によれば、悪い成績を努力しなかったせいにすれば、能力が低いせいにしなくて済むからです。 そして、回避行動が極端になると回避性パーソナリティ障害になります。 回避行動を止めるためには、自分が回避癖であることを自己受容して、認知(事実の受け止め方)を修正する必要があります。 普段気にしていない自分の意思決定プロセスを意識することで、失敗を回避する癖に気づくことができ、失敗を恐れずに新しい挑戦をする勇気を出すことで成長することができます。 また、自分が不安を抱えていることに気づいてその不安と上手に付き合うことで、なぜ不安が出てきているかがわかるようになるので、自分の心の調整力を鍛えることができます。
メタ認知とは、自分が認知していることを客観的に把握して制御することです。 「認知行動療法」は、自動思考が現実とどれだけ違っているかを検証し、思考のバランスを整えるための心理療法です。
以上が私が考える、成功するために必要な思考方法です。 失敗しないと絶対に成功にはたどり着けません。失敗を経験せずに人生を生き抜くことはできません。 失敗から学んで前進することだけに集中してください。 成功とは、勝つことではなく最善を尽くすことです。
数年後にもう一回読んでみて考えが変わったら修正します。 私の考えが誰かにとっての別の視点になれば幸いです。
変更履歴
- 2024/7追記:キャロル・S・ドゥエック (著), 今西 康子 (訳)『マインドセット:「やればできる!」の研究』 の成長マインドセットの視点を追加しました。